日本料理や食べ物には、多くの対比が見られます。それは表と裏、陰と陽のような関係性のようにも思われ、また、吸気と呼気(息)や本音と建て前など日本の食文化の背景にある‘粋’な感覚も感じられます。
調味料では、
- 濃口と淡口(醤油)
- 赤と白(味噌)
食材では、
- 豆腐と油揚げ
- 煎茶と番茶
- 浅漬けや古漬け
飲み物でも
- 辛口と甘口(日本酒)
- 乙類と甲類(焼酎)
- 白湯と重湯
調理法なら
- スキヤキとしゃぶしゃぶ
- 味噌汁とお吸い物
- かば焼きと白焼き(うなぎ)
- 白造りと黒造り(塩辛)
このように見ると、ありとあらゆる日本の食に関する物事が対比を使って表されているようです。
中でも日本料理は重さと軽さに重点を置く傾向があり、濃口醤油は重い、淡口醤油は軽い。赤だしは重い、白だしは軽いとイメージされるのではないでしょうか?
豆腐も色が‘淡’で軽く、油揚げは‘濃’で重さを感じ、味噌汁とお吸い物も、味噌汁は重みのある味噌味、お吸い物は軽い塩味で表現できます。
また、さつま揚げとはんぺんのように、魚のすり身を調味して揚げ、弾力と歯応えを強調したさつま揚げの‘重さ’に対し、魚のすり身にヤマノイモや片栗粉を加えて気泡性を出すはんぺんの‘軽さ’の対比があります。
漬物も、古漬けは重く、浅漬けは軽い。日本酒の甘口は芳醇なコクで重さを感じ、辛口はキレがよく軽いと感じます。
焼酎も旧式蒸留の乙類は味も香りも高く濃型で重い、新式蒸留の甲類は水とエチルアルコールだけの構成で淡型で軽い。
刺身においても、赤身はうまみで充満するから濃型で重い、白身は味も色も淡白で淡型で軽い。
などなど、重さと軽さの対比が見られるのが日本食の特徴ともいえます。
このように、日本人の食は、同じ食材や料理の中に、互いを対比させ、重さと軽さの両方で食べる特徴があります。
ただの混じりけのないお湯さえも白湯(さゆ)と呼び、水の量を多くして、米を炊いたときの糊状のものを重湯(おもゆ)と呼び区別するなど、粋な表現感覚が和食の視点からよくわかると思います。
このような独特のセンスは、日本人特有です。
季節ごとの匂い(「春一番」とか「秋の香り」とかの表現)も日本の文化や歴史から日本人の根底に根付いている素晴らしい感性だと思います。